写真館 二千年一夜




亀崎神社の吹火
広島県広島市
2006年10月14日

亀崎神社を氏神とする深川地区では、
毎年10月第2土曜の亀崎神社秋季大祭前夜祭で約100年もの間受け継がれてきた「十二神祇神楽」が披露される。
平成16年には吹火も復活し、高さ10m以上の吹火と神楽が幻想的に重ね合わう。


〜goodtimeの追想〜

10月は全国各地で秋祭りが行われており、
地域によっては手筒花火が披露されている有名な神社も少なくないと思うが、
広島市内でも実は伝統花火「吹火」があることを知った。
かつていろんな神社で吹火が行われていたらしいが、
事故を起こしたことで消滅してしまう神社も少なくないとか。
ましてやただでさえ火薬の取り締まりや安全に厳しい今のご時世、狭い境内で吹火を行うには難しい時代になったかもしれない。
それでも地元愛好家の人達が今の時代だからこそ若い世代に伝承していきたい思いから吹火を復活させ披露している。
その吹火をぜひ写真に収めて見たいと思っていた。
ただあまりにも情報が無いので、とりあえず広島市観光課に問い合わせてみたが、
期待する答えは返ってこなかった。
火薬を取り扱うのであれば消防局に届け出が必要なので、
駄目元で問い合わせてみると、まさかの回答が返ってきた。
ちなみに第二土曜日に行われる神社は以下の神社。

・三宅神社(東区戸坂)
・亀崎神社(安佐北区深川)
・大歳神社(西区井口二丁目)

悩んだ結果、問い合わせて電話対応が良かった亀崎神社に決めた。

秋晴れの広がる中、15時00分、高陽ニュータウンに到着。
小さな神社なので駐車場は関係者のみで車を止めることが出来ず、
近くにあったフジグランに止めさせてもらう。
早速、神社へ行って現地調査開始。
亀崎神社は、どこにでもある普通の神社で境内もそんなに広く無い。
そんな境内の一角に立入り禁止区域が吹火の舞台。
どんな感じで展開されるのかまったく把握出来てないので、
とりあえずスケジュール確認、どのように吹火が行われるのか徹底調査。
しかし、吹火に関して詳細を知っている人はいなかったので、
吹火が行われる時間だけ掴み、時間に余裕があるので一旦撤収。
駐車場を提供させてもらっているのでそのお礼を兼ねてフジグランで早い夕食を取ることにした。

暑かった日差しも太陽も沈みかけ少し寒くなってきた。
機材を背負って再び亀崎神社に向かった。
17時30分、まだまだお祭りの雰囲気とはほど遠い光景ではあるが境内の露店の準備は完了していたようだ。
消防の隊員が火事にならないように境内の林に水撒きをしている。
吹火から観覧場所まで約20m離れているらしいが、これは消防による厳しい注文らしい。
ここ亀崎神社の吹火も過去に事故があって以来、中断されていたがが平成16年に見事に復活した。
夕方になると偉い人達も境内に集まり、吹火に関して詳細を握っている人からいろいろと情報を得ることが出来た。
尾道から来たことを知ると、たいそう喜ばれお酒を進められたが、運転があるので丁重にお断り。

空も薄暗くなる18時過ぎにようやく吹火が到着。
1本1mくらいあるであろう吹火の筒は大事に抱えられながら神社で奉納。
吹火の勢作は牛尾煙火製造所だと思っていたが、実際に作っているのは資格を持った愛好者。
牛尾煙火がどこまで協力しているかはわからないが、綺麗な吹火が見れそうな予感。
暗くなると人出も一気に増えてきた。
神楽の舞台も準備が整っている。
18時30分、雷が打ち上がり前夜祭が始まった
吹火奉納や巫女舞い、神楽奉納に続いていよいよ吹火が点火される。

19時35分、1本目の吹火を披露。
予想では、境内で筒を持ったまま披露するのだとばかり思っていたが、
櫓の上で筒をくくり付け点火させる方法。
前夜祭のメインは神楽で吹火はオマケ的存在のような感じで興味を示しているものはあまりいなかったものの、
いざ吹火が吹き上がると一斉に歓声が上がる。
綺麗な和火色、思ったよりも高く吹き上がるり、そして最後に破裂。
あまりの凄さに驚いたが、どうやら破裂した吹火は失敗作らしい。
20mの保安距離の理由がわからんでもない。
奉納された吹火は10本。
吹火は、作り手によって吹き上がり方に特徴があり、ベテランが作ったものは綺麗に吹き上がり、
また性格の荒い人は吹き方も荒く、穏やかな人は優しい吹き方をするんだとか!?
理想の吹き上がり方として、最初は勢い良く吹き上がり徐々に収まりながら最後は一気に吹き上げて終了。
素人の見た目では違いがよくわからないが、
確かにベテランが作った物は綺麗に見えるような気がした・・・多分
10本中2本は破裂したがその他は綺麗に吹き上がったのではないだろうか。
吹き終えた時に拍手が起きていた。
20時55分に吹火10本すべて終了。
撮影の手応えはイマイチではあるが、今回は実験の意味で今後に生かせたらと思う。

神楽にはさほど興味は無いものの、
まだフジグランの閉店まで時間があるのでちょっと見学させてもらった。
実際にこうしてじっくり見たこと無かったが、
鬼や天狗の面を被り、笛や太鼓、鐘の音に合わせて踊る光景は何とも不思議な世界を感じた。
訳のわからない演題を理解すれば見方や楽しみ方もまた違ってくるのかもしれない。

初観覧、初撮影の広島伝統花火。
すっかり都会化された住宅街の片隅で古き良き日本を見た気がした。
本当は探せばどこにでもあるのかもしれないが、探そうとしないから見つからないだけなのか。
しばらく行ってないわが町の秋祭り。
今度行ったら少しは違う見方で楽しめるかもしれない。
いろんな意味で今日はとても貴重な時間を過ごさせてもらった。





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